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その後、ジャックに案内されセイディが連れてこられたのは、王宮の一室だった。その部屋は質素という言葉が似合い、王宮には似つかわしくない部屋。興味深そうにきょろきょろと辺りを見渡してしまうセイディに対し、ジャックは「……いろいろと、今回は特例だ」と言いながらため息をつく。
「普段は地下牢に入れるんだがな。今回に限っては、取り調べに時間をかけることになった。消耗を減らすためにも、こっちに入ってもらっている」
ジャックは淡々とそう告げ、セイディを手招きする。なので、セイディはゆっくりと歩を進めた。
そして、部屋の奥の奥。そこに、ジャレッドはいた。何処かやつれたような表情を浮かべるジャレッドは、セイディのことを見つけると「セイディ!」と言って駆け寄ってくる。が、すぐにジャックに阻まれていた。それをありがたいと思いながら、セイディは表情を消してしまう。
(こういう時、どういう表情をすればいいのかしら?)
それは、そう思ってしまったためだ。
対するジャレッドはセイディの表情が無であることに気が付いてか、少し気まずそうに視線を逸らす。きっと、自分を助けてくれるわけではないと悟ったのだろう。……いつもは鈍いのに、こういう時は鋭いのだな。いや、違う。多分、神官長にこってりと絞られ、ほんの少しだけ相手の様子を窺うことを覚えたのだろう。そう、セイディは判断した。
「とりあえず、座れ。こいつに触れたら、ただじゃおかないからな」
ほんの少しだけすごみながら、ジャレッドにそう告げるジャック。そんなジャックに怯んでか、恐る恐るといった風にジャレッドは指定された椅子に腰を下ろした。それから、ジャックはセイディにも椅子に腰かけるようにと指示を出す。
「一応こっちには結界魔法がかかっているから、アイツがお前に手を出すことは出来ない。……その点は、安心して良いぞ」
「……ありがとう、ございます」
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