元婚約者に会いに行きます(2)

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「……魔法騎士団の団長、だったか」  ジャレッドは、ジャックのことを見つめてそう言う。だからだろう、ジャックは「……そうだな」と言って腕を組む。ジャックは何処となく不機嫌そうであり、大層迫力がある。もしかしたら、ジャレッドに声をかけられたのが不満だったのかもしれない。それか、その馴れ馴れしい態度が不快だったのかもしれない。 「……ジャック・メルヴィルだ」  が、ジャックも大人なのだろう。ゆっくりとそう名乗る。もちろん、名乗る必要などなかったのだろう。なんといっても、相手は犯罪者なのだから。 「……ジャック、か」  その後、ジャレッドはそんな言葉を零す。一体、ジャックが何だというのだろうか? そう思い首をかしげてしまうセイディに対し、ジャレッドは「……セイディの新しい恋人か?」というとんでもない爆弾を落としてきた。 「……はい?」  一体、彼は何を言っているのだろうか。そう思ったからなのか、セイディは自分の頬がひきつるのを実感した。……本当に、自分がジャックの恋人など図々しくてありえない。そもそも、身分が釣り合っていないじゃないか。 「だって、親しそうじゃないか」  いやいやいや、全く親しくありませんけれど?  脳内でそう繰り返し混乱するセイディを他所に、ジャックは慌てて立ち上がったかと思うと「そんなわけあるか!」と言ってジャレッドのことを睨みつける。その態度はある程度予想できていたとはいえ、そこまで否定しなくてもいいじゃないかと思う気持ちも、セイディの中に芽生える。まぁ、予想していたのでこれっぽっちも傷つかないのだが。そこまで柔らかい心を、セイディは生憎持ち合わせていない。
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