元婚約者に会いに行きます(3)

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 ミリウスから教えてもらった帝国への内通の話。それに通じる手掛かりが、知れればよかったのだけれど。心の中でそう思い落胆するセイディの隣で、もう一度ジャックが椅子に腰を下ろしたのが分かった。 「……あと、もう一度だけ言っておきますが、私はジャック様の恋人ではありませんから」  そして、セイディはもう一度はっきりとそう言っておく。自分は婚姻するつもりなどこれっぽっちもない。そういう意味を込めてジャレッドを睨みつければ、ジャレッドは「……そうか」と静かに言葉を告げてきた。 「……僕と一緒にいた頃よりも、楽しそうだなって、思ったんだが」 「そうですね。それは、認めます」 「おい」  セイディの言葉に、ジャックも反応する。そんな彼を他所に、セイディは「いろいろと、お訊きしたいのですが」と話を本題に移すことにした。一応、ジャレッドはセイディが自分を助けるつもりはないということを理解しているらしい。何処となく疲れたような表情で、セイディのことをまっすぐに見据えてくる。 「……アーネスト様のこと、なのですが」  ゆっくりと噛みしめるようにその名を呼べば、ジャレッドは「……あの帝国の魔法騎士か」とボソッと言葉を漏らす。そのため、セイディは「そのアーネスト様です」とはっきりと返事をした。 「アーネスト様、何か目的があるとかおっしゃっていませんでしたか? それか、何かおかしなことを……」 「……いや、特には」
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