元婚約者に会いに行きます(3)

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 が、ジャレッドが返してきた言葉は予想ハズレの言葉だった。いや、違うのだろう。元々、そんな予感は薄々していた。アーネストのような人物が、易々と自らの情報を漏らすとは考えにくい。きっと、最低限のことだけをジャレッドに教えていたのだろう。 「あの男は……そうだな。魔法石を使って僕を操っていた……らしい。あと、アフターフォローはしないとか、なんとか、言っていたような……」 「アフターフォローですか」 「僕が破滅するのも成功するのも、運次第だと言っていたような気がする」  ジャレッドは少し考え込んだ後、そんなことを教えてくれた。その言葉は、なかなかにあのアーネストらしい言葉ではないだろうか。 「あと、この国には諜報活動に来ていると言っていたような気がする」 「それは、知っております」 「……それから……あぁ、『あの方が動きやすいように』とかも、言っていたような気がする」  そのジャレッドの言葉を聞いて、セイディは思考回路を動かした。アーネストの言う『あの方』とは大方フレディのことだろう。もしくは、リリス。……あと可能性があるとすれば、ジョシュアだろうか。だが、ジョシュアの場合はあの方とは言わないはずだ。やはり、一番に思う浮かぶのはフレディとリリス。 「……そうですか」 「あの男は、僕を使ってこの王国を混乱の渦に陥れようとしていたみたいだ。……まぁ、失敗したんだけれどな」  ははは。そんな乾いた笑いを零すジャレッドは、何処となく寂しそうだった。でも、特別な同情などは湧いてこない。だから、セイディは「そうですか」ともう一度相槌を打つだけにとどめておいた。 「……今後、どうされるのですか?」  そして、そう問いかけてみる。すると、ジャレッドは「……どうするもこうするも、神殿には戻れない」と言って目を伏せていた。その言葉は、正しい。
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