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「……いや、もうレイラのことはどうでもいい。よくよく考えれば、レイラは僕のことを好きだったわけじゃない。……セイディの婚約者だから、奪いたかっただけなんだろう」
「そう、ですか」
その回答にホッとした自分がいることに、セイディは驚いてしまった。どうして、そう思うのだろうか。ジャレッドが、レイラという毒牙から逃れたことに対して、安堵しているのだろうか? そんなの、意味なんてないのに。
「……ところで、どうしてジャレッド様は私に会いたいなんておっしゃったのですか?」
あぁ、そういえばもう一つ問いかけなくちゃいけないことがあったな。ふとそんなことを思い出し、セイディはゆっくりと首をかしげてそう問いかけてみる。すると、ジャレッドは「……言いたいことが、あって」と視線を彷徨わせながら消え入りそうな声で告げてくる。
「……セイディ。悪かった。僕が、間違っていた」
「……ジャレッド、さま」
「いつからだろうな。セイディに謝らなくちゃいけないと、思うようになっていた。レイラの言葉に騙されたとはいえ、神殿を追放してしまったこと。勘当のきっかけを作ってしまったこと。全部、僕のせいなんだよな」
ジャレッドのその言葉に、セイディは一瞬だけぽかんとしてしまう。が、すぐに現実に戻りセイディは首を横に振る。
自分は、追放されても幸せだった。むしろ、追放されてからの方が幸せだった。自分を認めてくれる人たちの元で、働ける。それがどれだけ幸せなことなのか。きっと、ジャレッドには一生分からないだろう。
「私、勘当されてからの方が幸せでした。なので、むしろジャレッド様には感謝しているのかもしれません」
「……セイディ?」
「私、今、すごく幸せです。お父様やお義母様、レイラの魔の手から逃れて、自由に過ごせる。そんな日々に、幸せを覚えています」
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