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身体が重い。そう思いながらセイディが瞼を開けば、そこは何もない空間だった。……魔法の類で作り出されたかのような空間に、セイディは目を凝らす。しかし、特に何も見えない。
(ジャレッド様が何かをした……というのは、考えにくいわね)
そして、そう思う。ジャレッドが何かを出来る可能性は低い。ジャック曰く結界が張ってあったらしいし、ジャックが隣にいた以上何か変なことをすることは出来ない。それに、ジャレッドは改心していた。もしもあれが演技なのだとすれば、彼は役者に向いている。そう思えるレベルだった。
「……とりあえず、どうにかして目を覚まさなくちゃ」
そもそも、まだもう一日『光の収穫祭』は残っているのだ。こんなところで大切な時間を無駄にするわけにはいかない。そんな風に考え、セイディはとりあえず頬をつねってみる。その後、自分の手をつねってみる。古典的なやり方かもしれないが、今はこれしか考えられなかった。
だが、目が覚める気配はない。
「一体、どうしろって言うのかしら?」
多分、セイディをここに置いた人物は何か狙いがあるのだろう。そうじゃないと、こんな手間のかかることはしない。
その後、しばらくした時だった。誰かの足音が、耳に届いた。その足音にセイディは聞き覚えがある。そのため、セイディはその足音の方向に視線を向ける。すると――そこには、予想通りの人物がいて。
美しい青色の髪。目を細めながら、セイディのことを見据える人物。ブーツと床がぶつかるような音を鳴らしながら、彼はセイディのすぐ前で立ち止まった。
「……アーネスト様」
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