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その人物の顔を見て、セイディはそう言葉を零した。その言葉を聞いたためだろうか、アーネストはにっこりとした表情を作る。それから、ゆっくりと口を開いた。
「ようやく、お出ましですか」
彼は凛とした声でそう告げると、セイディの目をまっすぐに見つめてくる。その目つきの鋭さに、セイディは一瞬だけぶるりと背筋を震わせた。が、怯んでなどいられない。そう思い、アーネストのことをまっすぐに見据える。そうすれば、彼は「……そんなに、睨まなくても」と小さな声で呟いていた。
「……こんなところに私を連れてきて、何が狙いですか?」
「いえ、俺には狙いなどありませんよ。……ただ、毒が効いてきたというだけですから」
「……毒」
「はい。貴女たちが回収していた魔法石。あの中には、遅延性の毒が入っていました。光の魔力の持ち主にだけ、流れる毒が」
クスっと声を上げて笑うアーネストに対し、セイディは目を見開いてしまう。そこまでの想像は、出来なかった。でも、そう言われれば当然なのだ。あの魔法石には何か狙いがあったに違いない。考えが、甘かった。
「狙ったのは貴女……というか、聖女ですね。まさか、貴女が全部回収するとは思いませんでしたけれど」
クスクスと声を上げながら笑うアーネスト。そんな彼を見つめながら、セイディは瞬時に思考回路を張り巡らせる。毒が流れ込んだとして、自分の身体は大丈夫なのだろうか? そんな心配が浮かび上がり、セイディの中で嫌な予感が駆け巡る。
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