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しかし、セイディはその提案を一刀両断した。確かに、アーネストの言っていることは魅力的だ。でも、何かを差し出してまで、実母の正体を知りたいとは思わない。使用人たちに慕われていた実母のことだ。そんなことをすれば、悲しむのは目に見えて分かる。それに……。
「お母様の正体は、私が自分で探ります。なので、アーネスト様の力は必要ありません」
しっかりとした声でそう言えば、アーネストは「残念」とだけ告げ、セイディの真っ赤な目を見つめてくる。
「……あの人がいる以上、俺たちが攻撃をしても、大したダメージは与えられません。だけど、俺にもジョシュアにも引けないわけがある」
「そう、ですか」
「だから、俺たちは明日も貴女たちに攻撃を仕掛けます。もしも、あの人が気まぐれで貴女を助けたのだとすれば、俺たちにも勝ち目はありますから」
それは宣戦布告、と言う奴なのだろう。そう判断し、セイディがアーネストのことを睨みつければ、彼は「さぁ、運試しと行きましょうか」なんて言う。
「人生なんて、所詮ギャンブルです。俺は自分にデメリットが降りかからないギャンブルは大好きなので」
「自分勝手、ですね」
「人間なんて所詮みんなそうでしょう。貴女の元婚約者だって、異母妹だって、そうでしょう」
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