ハプニング、ですか?

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 ジャックも前を向いたままそう言う。ジャックの言っていることは、セイディにだって分かる。彼は王国筆頭公爵家の嫡男なのだ。婚姻し、家を存続させる必要がある。以前ジャックは弟がいると言っていた。そのため、血が途絶えることはなかなかないだろうが、それでもジャックの両親は彼に婚姻してもらうことを望んでいるはずだ。 「では、婚活……頑張ってくだ、さい」 「……そうだな」  まぁ、以前から数回お見合いをしては失敗しているという話は、聞いているのだが。それも、ミリウスに笑い話の一環として教えられた。ミリウスとジャックは気心の知れた仲だからこそ、そんなことを知っているのだろう。……だから、自分がそれを言っていいわけがない。面白そうだとは、思ってしまっているが。 「……ところで、だな」 「どうかなさいましたか?」  不意に改まったようにジャックが声をかけてくるので、セイディは首をかしげながら彼の方に視線を向けてみる。そうすれば、ジャックは「……リアムに、ちょっかいは出されていないか?」と問いかけてきた。……その問いかけは、今更過ぎる。 「今更ですよね?」 「そうだな。……だが、ふと気になってな」  ならば、自分の護衛にリアムを選ばなかったらよかったのに。そう思ってしまうが、リアムが無理強いしたというのは既に本人から聞いていた。なので、ジャックを責める気は起きなかった。 「……まぁ、苦手意識は薄れました……かね?」 「そうか、だったらよかった」  いや、全くよくないのですが。心の中でそう付け足すものの、こちらも決して口には出さない。やはり、これをジャックに伝えても意味などないだろう。それが、分かっているからだろう。
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