美しき慈愛(1)

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 重たい瞼を開き、セイディが目を覚ます。ゆっくりと起き上がりずきずきと痛む頭を押さえれば、側にいたのであろうジャックが「大丈夫か?」と問いかけてくる。そのため、セイディは静かに頷いた。 「……今、何時ですか?」 「そうだな。丁度日付が変わったくらいか」  ジャックのその言葉を聞き、セイディが周囲を見渡せばどうやらここは王宮内にある医務室らしい。寝かされているのは医療用の寝台であり、寝心地は悪くはないが……あまり、良くもない。 「ところで、お前から毒が検出されたそうだが……」  セイディが大きく伸びをしていると、ジャックがそう声をかけてくる。……毒。確かに、アーネストはあの時の魔法石に毒が忍ばせてあったと言っていた。しかも、光の魔力を持つ者にだけ流れる毒。セイディだけを狙ったわけではないらしいが、結果的にセイディがすべて一人で引き受ける形になってしまった。……ほかに被害が出なかったと考えれば、まだ幸いだっただろう。 「……えっと、お話すればまぁそこそこ長くなるのですが」  その後、セイディは夢のような空間でアーネストと会ったこと。アーネストとした会話の内容をジャックに話す。その内容を聞いたためだろうか、ジャックは「……あの男は、何処までも」と零していた。あの男。それが表すのは、間違いなくアーネストただ一人。 「まぁ、とりあえずお前が無事でよかった。……お前が目覚めたことだし、俺は部屋の外に行く」  セイディの話を一通り聞き終えた後、ジャックはそんな言葉を告げて立ち上がる。……わざわざ、側でセイディが目覚めるのを待ってくれていたのか。そう思ったが、ジャックは護衛である。眠っているセイディが襲われないようにと守る役割もあったのだろう。この間までは、そういう役割はリリスが務めてくれていた。が、リリスにはもう頼れないため、ジャックが側にいたということなのだろう。 「……とりあえず、俺は部屋の外で待機している。何かあれば呼んでくれ」
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