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最後にジャックはそれだけの言葉を残し、部屋を出て行ってしまった。そんな彼の背を見つめながら、セイディは一人きりになった部屋で呆然とする。……アーネストは、本当に何が狙いなのだろうか。でも、今はそれよりも。一つ、気になることがある。
(……あの人)
あの時、セイディのことを助けてくれた不思議な男性のこと。多分あの人物の正体はヴェリテ公国の公爵で間違いないだろう。しかし、やはり一番に気になってしまうのは……どうして彼が、セイディを助けたかと言うことである。
(……もしかして、お母様のことと関係があるのかしら?)
そして、そう思ってしまった。アーネストはセイディとセイディの実母の顔がそっくりだと言っていた。もしかしたら、あの人物とセイディの実母は知り合いで、その縁で助けてくれたのではないだろうか? ……なんて、いくら何でも想像が過ぎるか。そう、思い直す。
「……まぁ、いいわ。とりあえず、明日の準備とか、しなくちゃ」
アーネストは明日も攻撃をすると言っていた。ならば、ほんの少しでも覚悟を決めなくてはならないだろう。ジャレッドを救った今、敵はアーネストとジョシュア、ただ二人。いや、もしかしたら実父や継母、レイラも敵かもしれない。が、そこまで考えたらきりがない。なので今は、そういうことにしておこう。
そんなことを思いセイディは寝台から下り、近くにかけられていた上着のポケットを漁る。そこには、実母の形見である指輪が入っていた。これだけは、何が何でも守り切らなくては。記憶にない実母と、唯一の繋がりだから。
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