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彼――クリストバルはそのふわふわとした銀色の髪を揺らしながら、にっこりと笑っていた。そのため、セイディは恐る恐る窓を開く。クリストバルからは敵意がこれっぽっちも感じられない。だから、窓を開けても問題ないと思ったのだ。
「……どう、なさったのですか?」
窓枠に手をつき、身を乗り出しながらセイディはそう尋ねる。そうすれば、彼は「……一つだけ、貴女に言い忘れたことがあったので」と言ってにっこりと笑う。その笑みはとても美しく、何処となく女性らしさも感じさせてくる。中性的。クリストバルは、そんな言葉がとてもよく似合う男性だった。
「手を、差し出してくださいませんか?」
セイディがクリストバルに見惚れていれば、彼は静かな声音でそう告げてくる。……これは、どうすればいいのだろうか? 言い忘れたということは、手を差し出す必要はないはずだ。そう思い躊躇うセイディの考えはクリストバルに筒抜けだったらしい、「ついでに、手渡したいものもありますので」と続けた。
「……手渡したいもの、ですか?」
「はい」
クリストバルの言葉をセイディが復唱すれば、彼はそんな返事をくれる。……どうしようか。もう一度そう思ったものの、クリストバルは助けてくれた。それに、一切敵意が見えてこない。ならば、大丈夫だろう。そう判断し、セイディは恐る恐る手を差し出す。
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