最終日の始まり

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「よし、行くわよ」  そして、『光の収穫祭』の最終日。セイディは姿見の前でそう唱え、衣装のポケットの中に手を入れた。そこには、実母の形見である指輪と、昨夜クリストバルから貰った指輪を忍ばせてある。これにはお守りという意味もある。しかし、アーネストやジョシュアがどう仕掛けてくるかが分からない以上、持っていた方が良いという意味の方が強かった。聖女の力を強めれば、セイディでも彼らに一矢報いることが出来るかもしれないから。 (……クリストバル様が何を思って私にこれを託してくださったのかは、分からないわ。けれど、利用できるものは利用する。それだけよ)  心の中でそう呟き、セイディは部屋を出ていく。すると、部屋の前にはいつも通りきっちりとした格好をしたジャックと、少し面倒くさそうな表情をしたミリウスがいて。……やはり、最終日ということもあり二人ともセイディについてくれるらしい。いや、きっと今年が特殊なのだろう。 「護衛の方、よろしくお願いいたします」  軽く頭を下げてそう言えば、ジャックは「これも仕事だからな」と返事をする。ミリウスは何も言わなかったが、その視線はセイディに向けられている。多分、これで察しろと言うことなのだろう。 「あの二人がどう仕掛けてくるか分からない以上、俺たちも全力以上の力を尽くすしかない。……分かりますね、殿下?」 「……あぁ、一応、な」 「……はぁ、本当に殿下は」  ジャックとミリウスのいつも通りの会話を聞きながら、セイディはゆっくりと歩を進めた。とりあえず、予定通りに神殿巡りを済ませなければならない。多分だが、アーネストとジョシュアが仕掛けてくるのは神殿巡りをしている間だろう。一昨日や昨日のことを考えるに、その可能性が一番高いような気がした。
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