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そんなことを、セイディが考えていた時だった。セイディの意識が、一瞬飛びかけてしまう。視界が歪み、何処となく頭がふらふらとする。
そして、それから数秒後――セイディの足に力が入らなくなり、そのまま倒れこんでしまいそうになる。
「おい!」
「……あ」
だが、寸前のところでジャックが支えてくれたらしく、地面に顔面を打ち付けることは免れた。それにホッと一息をつこうとするが、それよりも、たった一つだけ、問題がある。
「……あ、あの」
どうして、自分はジャックに抱きしめられるような体勢になっているのだろうか? そう思って、セイディが目を瞬かせていれば、ジャックは自分のやっていることにようやく気が付いたのか、ハッとしてセイディの身体を放す。
……いや、全く怒っていないのだが。助けてくれて、感謝しているのに。目でそう訴えようとするものの、彼はセイディから離れるように一歩、二歩、三歩と後ずさる。……だから、怒っていないのだが。
「あ、あの、ジャック様……?」
「わ、悪かった! ……その、だな」
「いえ、助かったと思っているのですが……」
何故、彼がそこまで慌てふためく必要があるのだろうか? 一瞬そう思ってしまうが、やはり勘違いされたくないとかそういうことだろう。そう判断し、セイディは「私の方こそ、申し訳ございませんでした」と言う。先ほどのことは、自分に非がある。どうしていきなり意識が飛びかけたのかは、分からない。それでも……間違いなく、セイディの不注意に関係している。
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