巡る好意

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「お前は殿下と会話をしていろ。……わざわざ、俺を見るな」 「……いえ、見ていたわけでは」 「……じろじろ見ていただろ」  実際、呆然と見ていたことは正しい。が、決してじろじろと見ていたわけではない。そういう意味を込めてセイディが首を横に振れば、ジャックはそっと視線を逸らしていた。これ以上言うことは無駄だと感じたのかもしれない。 「お前本当に扱いが面倒だなぁ」  そんなジャックを見てか、ミリウスはからかうような声音でジャックにそう声をかけていた。それが気に障ったのか、ジャックは「殿下はアイツと話していてください」と素っ気なく返し、また外を見つめていた。 「一つだけ、教えておいてやる」  不意にミリウスはセイディの方に近づき、セイディの耳元に唇を寄せる。それから、彼は「……ジャック、多分お前のことが好きだぞ」と突拍子もないことを告げてきて。その所為で、セイディは「はい?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。 「いや、恋愛感情じゃないぞ。単に、友人として好いているっていうだけだ。……友人以上恋人未満って奴?」  その言葉に驚きセイディがミリウスの顔を見つめれば、彼は悪戯が成功した子供の様な無邪気な笑みを浮かべていた。……からかっていただけ、なのか。それならば、構わない。そう思いセイディが一息ついていれば、ミリウスは「完全に嘘じゃないぞ~」と軽く言ってくる。 「というか、ジャックが好きでもない奴に女性克服の練習を頼むわけがないだろ」 「……まぁ、それはそうですね」
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