巡る好意

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 『光の収穫祭』の準備期間が始まる前。セイディはジャックの女性克服の練習を手伝っていた時期があった。なんでも、ジャックに縁談が来ていたらしく、それの練習だとか、なんとか。ジャックは元々断るつもりだったらしいが、相手を不快にはしたくないということだった。そのための、練習だった。 (デートの練習……みたいなことをしたけれど、あれはデートじゃないわね)  ふとあの時のことを思い出したため、セイディの口元が緩んだ。結局あの後ジャックはいつも通りの態度で相手に接してしまい、縁談は破談になったとか、なんとか。……まぁ、噂で聞いただけなので実際はどういう風だったのかは知らない。 「……おい、殿下。余計なことを言っていないでしょうね」  そんな二人のこそこそ話が耳に入ったのか、ジャックが言葉を挟んでくる。そのためだろう、ミリウスは「別に余計なことじゃない」と言って好戦的に笑っていた。 「お前がセイディのことをそこそこ好いているっていう話だ」 「……誰がだ!」  ミリウスの言葉に、ジャックは言葉を叫んでいた。……それだと、逆に怪しまれるぞ。そうセイディは思ってしまうが、彼はそこまで思考回路が回っていないのだろう。 「恋愛感情か?」 「余計なお世話だ!」  ……それだと、逆に肯定しているようにしか聞こえないぞ。冷静な思考を持っている人がいれば、そう告げたのだろう。ただ、生憎そういう人物がここにいなかった。それだけだ。
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