巡り巡って滅ぼす身

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「ジャック、お前は本当にからかうと面白いな。……アシェル共々、いい暇つぶしだ」  ジャックが一人慌てふためく中、ミリウスは悠々自適に寛ぎながらそんな言葉を呟いていた。慌てふためいているジャックには、多分その言葉は聞こえていないだろう。が、セイディにはしっかりと聞こえていた。こういう状態のことのを異国の言葉で知らぬが仏と言ったはずだ。 (まぁ、ミリウス様もこうおっしゃっているけれど、ジャック様のこともアシェル様のことも信頼しているわけだし、放っておいていいわよね)  ミリウスは口ではこう言っているが、実際アシェルやジャックのことをとてもよく信頼しているということを、セイディは知っていた。だから、何かを言うつもりはない。  そんなことをセイディが考えてしばらくした頃。ミリウスの口から「そろそろ、か」と言う言葉が零れていた。確かに、もうそろそろ神殿にたどり着くだろう。が、ミリウスの言っている「そろそろ」がその意味ではないことを、セイディは察した。きっと、襲撃のことだと思う。 「民たちに被害が行くくらいならば、ここで襲われた方が数倍マシだな」 「……そうです、ね」  ミリウスは返答を求めてそう言った訳ではないと、セイディだって分かっていた。しかし、言葉を返してしまった。それは、本当に無意識のことで。多分、ミリウスと同じ考えをしていたため、言ってしまったのだろう。 「今日は最終日だ。アーネストの奴も、ジョシュアの奴も本気で襲ってくる。セイディ、気を引き締めろよ」 「分かって、います」  返事を少しだけ躊躇ったのち、セイディはそう返した。どうして返事を躊躇ったのかは、よくわかっているつもりだ。多分、アーネストとジョシュアのことを考えてしまったからだろう。
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