それが、たとえ正義だったとしても

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 それから時は経ち。残る神殿は一つとなった頃。最後の神殿に馬車で向かっていれば、不意に馬車がガタンと大きな音を立てて揺れた。  その揺れにセイディが驚いていれば、ミリウスは窓の外を見つめ「……そろそろ、か」と呟いていた。セイディも隣から窓を覗き込めば、神殿はすぐそこ。そして、馬車の前に立ちふさがっている一つの人影。……大方、アーネストだろう。 「……降ります」  セイディはその光景を見つめ、ゆっくりとそう告げる。そうすれば、ミリウスは「おー」と言って自身も降りる準備を始めていた。たった一人、ジャックだけが「……呆れた」と零している。多分、二人の突拍子もない行動に言葉通り呆れたのだろう。が、止めることはない。  そのままゆっくりと馬車を降りれば、そこに立ちふさがっているのは予想通りアーネストだった。彼はにっこりと笑い、「昨日ぶり、ですね」とセイディに声をかけてくる。だからこそ「……そうですね」と答え、セイディは肩をすくめた。 「……一つだけ、アーネスト様に伝えたいことがあります」  それから、アーネストの目をまっすぐに見つめ、セイディは凛とした声と態度でそう告げる。そんなセイディの態度を見たためだろうか。アーネストは目を閉じて「どうぞ」と返事をくれた。……どうやら、彼はセイディの話を聞いてくれるらしい。 「余計なお世話だって、分かっています。……ですが、どうしても言いたいので」  アーネストに対し、セイディはゆっくりと言葉を投げつけることにした。一度だけ深呼吸をして、目を瞑って、開く。 「貴方たちのやっていることは、正義ですか?」  凛とした声で、怯まない力強い声で。そう問いかける。その問いかけを、アーネストは予想していたのだろう。口元を緩め「何度も言っているでしょう」と返答をする。……それはつまり、問いかけの肯定という意味。
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