それが、たとえ正義だったとしても

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「俺たちのやっていることは、俺たち以外には悪かもしれない。ですが、俺たちにとっては正義であり、正しい」 「……そうですか」  その回答は、予想できていた。そのため、セイディは「……けれど」と続ける。怯まないように。視線はまっすぐにアーネストに向けて。 「それがたとえ貴方たちの正義だったとしても、私たちには私たちの生活があり、正義があります。……易々と、貴方たちの思い通りにはなりません。皇帝陛下にも、そうお伝え願えると幸いです」 「……ここで全てを終わらせれば、そんな伝言無意味でしょう」  狂気を纏ったような声が、セイディの耳に届く。確かに、アーネストの言っていることは間違いではない。この場で全てが終わってしまえば、セイディの言葉など無意味なのだ。皇帝ブラッドリーにも、伝わらない。だから、自分たちのやることは。 「そうですね。……でも、私たちはここで全てを終わらせるつもりは一切ないので。……そこだけは、ご理解いただければ、と」  全力で、アーネストたちを止めるだけなのだ。そう告げれば、アーネストはただ肩をすくめる。その後「やれるもの、ならば」と言って呪文を唱え剣を取り出す。そして、素早い動きで切りかかってきた。  狙いを定められたのは、やはりと言っていいのかセイディだった。そのため、セイディはその剣を躱す。その際に、髪の毛が剣の先にかすってしまったらしく、数本はらはらと落ちていく。それをよそ眼に、セイディは体勢を整えた。
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