それが、たとえ正義だったとしても

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「私は、負けませんから」  じっとアーネストのことを見据え、そう叫ぶ。その声を聞いたためか、アーネストは「やれるものならば!」と言ってもう一度切りかかってくる。が、その剣をジャックが自身の剣で受け止めていた。 「……邪魔、ですね」 「生憎、俺の仕事はお前の邪魔だ」  アーネストの言葉に、ジャックはそう言葉を返していた。そのまま剣を押し返し、凛とした態度でアーネストを見据えていた。 「お前の相手は、俺がする。……魔法騎士同士、負けられないからな」 「……そうですか。じゃあ、さっさと決着をつけちゃいましょうか」  剣と剣がぶつかり合う音を聞きながら、セイディは視線を素早く動かす。……アーネストが現れたということは、ジョシュアもいる可能性が高い。それに、多分それ以外にも誰かいるはずだ。こちらが三人である以上、相手も三人のはず。アーネスト、ジョシュア。あと、もう一人。 (……だけど、マギニス帝国の刺客を増やすことは出来ないはず。だったら、ありえるのは)  アーネストは人を操る魔法が使える。ということを前提に置けば、一番に考えられるのは――この王侯の人物を操り、戦力にするということ。慌ただしく視線を動かし、目的の人物を捜す。そうすれば、その人物はあっけなく見つかった。 (……やっぱり、ね)  あの人物は、多大なる魔力を持っており、魔法を使いこなせている。戦力にすれば、かなりのものになるはずだ。 「……セイディ、俺はジョシュアの相手をしてくる」  耳元で告げられる、ミリウスのその言葉にセイディは頷いた。その後、ミリウスは何もないはずの方向に飛び――そのまま、その辺りを大剣で切り裂く。そうすれば、そこからはジョシュアが現れた。……彼は、姿を消す魔法を使っていたらしい。 「……私は、逃げも隠れもしませんよ」  ミリウスに一瞬だけ視線を向け、セイディはそう告げた。その声を聞いたためだろうか。その人物は――姿を現す。 「神官長」  そこにいたのは、数日前に姿を消した神官長、その人だった。
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