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(……もう、これしかないのよ――!)  多分というか、絶対に使い方が違う自覚はある。だけど、やるしかないのだ。自分にそう言い聞かせ、セイディは神官長から視線を外さずに――その指輪を、神官長目掛けてぶん投げた。 「っつ……!」  きっと、神官長もセイディがこんな行動を取るとは予想もしていなかったのだろう。そのため、反応が遅れてしまった。その指輪に攻撃を仕掛けようとするが、時すでに遅し。指輪は神官長の顔面に――ぶつかる。  その瞬間、指輪が淡い光を醸し出す。だからこそ、セイディはそのタイミングで呪文を唱えた。自身の光の魔力と指輪から出される光の魔力を共鳴させ、神官長に注ぎ込む。 「……なっ」  近くから、アーネストのものであろう驚愕の声が聞こえてくる。その後から、ジャックの「アイツ……!」という呆れたような声も聞こえてきた。ジャックのことだ、セイディのあまりにも乱暴な方法に呆れを通り越してしまったのだろう。 (絶対に、負けるわけにはいかないのよ――!)  心の中でそう零し、セイディは神官長を見据えた。すると、彼の表情が少しずつ和らいでいく。……成功、したのだろうか。そう思いセイディが神官長を見据えていれば、彼は一瞬だけ目を見開いたのち……その場に崩れ落ちた。その足元に、指輪が転がる。 「やばっ、あんな方法あるんだな」  何処からか、そんな笑ったような声が聞こえてくる。この声は、ミリウスだろう。そう思いながら、セイディは呼吸を整えた。力いっぱい指輪を投げたこと。光の魔力を一気に注いだことから、体力はかなり消耗していた。でも、視線はそのままで。その視線は、ただまっすぐに神官長を見据えていた。意志の強い、光を目に宿しながら。
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