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「本当に、どいつもこいつも俺の邪魔ばっかりする」
「……それが、私たちのやるべきことですから」
アーネストの悲鳴にも似た声に、セイディは凛とした声で返した。
そんなセイディの言葉を聞いて、どう思ったのだろうか。アーネストは「……本当、邪魔、邪魔」と単語を繰り返す。その目は何処となく狂気をまとっているように見えて、セイディの背筋に冷たいものが走る。
(……このお方、やっぱり、ろくでもないわね)
アーネストやジョシュアのことも、傷つけない方法でことを済ませたい。そう思っても、それは無理なのだと再認識させられる。
(っはぁ)
もうそろそろ、セイディの体力も限界かもしれない。光の魔力を一気に放出した挙句、ずっと逃げることなど出来やしなかった。そう思いながらも、あきらめることはしない。……あきらめるわけには、いかないから。
(私は、生きなくちゃならないのよ。……クリストバル様が託してくださったように)
クリストバルは、セイディの力を見込んで指輪を託してくれた。その期待に応えるためにも、野垂れ死ぬわけにはいかないのだ。その一心で、セイディは足を動かしていた。
「……しつこい、ですねぇ」
「そりゃあ、俺の未来がかかっていますから」
さっさと、あきらめてくれたらいいのに。そう思いながらセイディが逃げていると、不意に衣装の端に足を引っかけ、その場に転んでしまう。……不運だった。
(というか、この衣装が動きにくいのがだめなのよ……!)
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