手伝え

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「えっと……助けてくださり、ありがとうございました」  とりあえず、お礼だけは言わなくては。そう考え、セイディは軽く頭を下げてそう告げる。そうすれば、ジャックは口元を片手で押さえながら「……あ、あぁ」と時間差で返してきた。その顔は何処となく真っ赤であり、照れているのは一目瞭然だった。 「あ、あの……」  でも、そこまで硬直しなくてもいいだろう。そう思いセイディが手を伸ばそうとすれば、ジャックは「い、行くぞ!」と誤魔化すように言う。そして、そのまま歩きだしてしまった。……これは、深入りしない方が良いだろう。そう考え、セイディは「はい」と端的に返事をし、ゆっくりとジャックについて歩き出す。 (っていうか、何もそこまで慌てふためかなくても……)  そんな風に思ってしまうが、ジャックだから仕方がないだろうと思う気持ちも、ある。それに、まだあれでもマシな反応だと思う。セイディ以外の女性だったら、もっと悲惨なことになっていたはずだから。それは、喜ぶべきことなのか悲しむべきことなのかは分からない。それでも、彼がこのままでいいわけがないだろう。 「……あの、ジャック様」  ジャックの隣に並び、彼の顔を見上げながら名前を呼べば、ジャックは「ど、ど、どうした!」と半ば叫ぶように言ってくる。……そこまで気にされると、こっちも恥ずかしくなってしまうじゃないか。どうせならば、気にしていないフリをしてほしい。ついでに言うのならば、忘れてほしい。 「ジャック様、もう少し、女性に対して免疫を付けた方が良いかと思います」  これは、余計なお世話に間違いないだろうな。それは分かっている。だが、誰かが言ってあげないとダメだろう。一番言える立場なのはミリウスだが、彼はジャックのこの現状を面白がっている。だから、絶対に言わないだろうな。それは、容易に想像が出来た。 「……余計な、お世話だ」  やはり、そう返してきたか。そう思いながら、セイディは「……ですが、その態度ですと相手の女性に失礼ですよ」と静かな声で告げる。
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