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「……ど、して」
その光景を見たセイディの口から零れたのは、そんな言葉だった。
真っ赤な目を見開いて、その誰かを見つめる。
「……クソッ」
アーネストの、慌てたような声が聞こえてくる。彼にとっても、これは完全に予想外だったらしい。それがわかるからこそ、セイディは誰かに駆け寄った。彼の綺麗な、銀色の長い髪が風に揺らめく。
「……フレディ、さま?」
ゆっくりと彼――フレディの身体を支えれば、彼は「よかった」と言っていた。そのよかったの意味が、これっぽっちもわからない。セイディを庇って、傷つくなんて。……帝国からの刺客であるはずのフレディに、メリットなどない。
「……かっこよく助けたかったけれど、咄嗟だったからこうなっちゃった」
目を細めながら、フレディはそう言う。その言葉に、嘘はこれっぽっちも感じられない。そのため、セイディは「……どうして、ですか」と声をかける。
「どうして、私を庇ったりしたのですか? フレディ様、帝国からの刺客で……」
確かに、フレディのことを信じたかったのは、ある。だけど、何もこんな形でやらなくてもいいだろう。そういう意味を込めて彼のことを見つめれば、彼は「……僕、変わりたかったから」と言う。
「僕ね、変わりたかった。それに、セイディのことを助けたかった。……だから、こうしただけ」
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