庇う人

2/4
前へ
/193ページ
次へ
「……ど、して」  その光景を見たセイディの口から零れたのは、そんな言葉だった。  真っ赤な目を見開いて、その誰かを見つめる。 「……クソッ」  アーネストの、慌てたような声が聞こえてくる。彼にとっても、これは完全に予想外だったらしい。それがわかるからこそ、セイディは誰かに駆け寄った。彼の綺麗な、銀色の長い髪が風に揺らめく。 「……フレディ、さま?」  ゆっくりと彼――フレディの身体を支えれば、彼は「よかった」と言っていた。そのよかったの意味が、これっぽっちもわからない。セイディを庇って、傷つくなんて。……帝国からの刺客であるはずのフレディに、メリットなどない。 「……かっこよく助けたかったけれど、咄嗟だったからこうなっちゃった」  目を細めながら、フレディはそう言う。その言葉に、嘘はこれっぽっちも感じられない。そのため、セイディは「……どうして、ですか」と声をかける。 「どうして、私を庇ったりしたのですか? フレディ様、帝国からの刺客で……」  確かに、フレディのことを信じたかったのは、ある。だけど、何もこんな形でやらなくてもいいだろう。そういう意味を込めて彼のことを見つめれば、彼は「……僕、変わりたかったから」と言う。 「僕ね、変わりたかった。それに、セイディのことを助けたかった。……だから、こうしただけ」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

741人が本棚に入れています
本棚に追加