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口元を緩めながら、フレディはそう言う。その笑みを見て、セイディはフレディの身体を支えるのをやめた。……今、自分がするべきことは。そう思いアーネストを見据えれば、彼は「……皇帝陛下に、なんと言えば……」とブツブツとつぶやいている。
(アーネスト様、気が動転していらっしゃるわね。だったら、今)
――今から、フレディのことを治癒しよう。
そう、思った。
そう思ったからこそ、セイディは実母の形見である指輪をはめ、ゆっくりと光の魔力を注いでいく。アーネストの魔法は強力だ。リリスの時も、一筋縄ではいかなかった。でも、やるしかないのだ。そう思いなおし、セイディはフレディの身体を見つめていた。
「……大丈夫、ですから」
少し苦しそうにするフレディに対し、セイディはそう声をかける。すると、彼は「……僕に、構っていても、いいの?」と問いかけてくる。それは多分、アーネストのことだろう。
アーネストのことを放っておくわけにはいかない。それは、セイディにもわかっている。でも、それ以上に。……セイディは、一人ではないのだ。
「大丈夫です。ジャック様や、ミリウス様がいらっしゃいます」
セイディはミリウスとジャックを信じている。彼らならば、アーネストやジョシュアのことを何とかしてくれると、信じている。そのため、フレディの治癒に当たるのだ。
(……やっぱり、うまくいかないわね……)
光の魔力を注いでも、なかなかうまくいかない。やはり、アーネストの魔法が原因だろう。そう思い、セイディが顔をしかめていれば、額に何かがぶつかる。それは、先ほど神官長に投げつけた指輪だった。驚いて顔を上げれば、ジャックがその指輪を投げつけてきたのだと分かった。……どうやら、彼はフレディを助けることに賛成らしい。
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