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「その宮廷魔法使いを助ければ、こっちにもメリットがあるだけだ」
小さくそう零し、ジャックはアーネストと向き合う。それを見たためだろうか。アーネストははっとしてジャックに向き直っていた。このままだと、自分に分が悪い。それを、理解したらしい。
(……どうにか、しないと)
焦ったら、うまくはいかない。わかっている。わかっているが、流れる血の量からして、あまり悠長なことは考えていられない。
そう思い、セイディは思考回路を張り巡らせる。すると、一つの考えが思い浮かんだ。
……セイディを助けてくれた、クリストバルが使っていた魔法だ。
(こうなったら、一か八かやるしかないわ)
クリストバルが使っていた魔法が、どういう仕組みをしているのかはよくわからない。なので、賭けになってしまう。が、このままフレディを殺すわけにはいかないのだ。……やるしか、ない。
「……セイディ?」
フレディが、ゆっくりとセイディの名前を呼ぶ。だからこそ、セイディは「……待っていて、ください」と言って目を瞑る。
耳には、剣と剣がぶつかるような音が聞こえてくる。未だに、戦いは行われているらしい。そんなことを考えながら、セイディはあの時のクリストバルのことを思いだした。
(クリストバル様の、お力をっ!)
脳内でそう唱え、セイディは一気に光の魔力を放出した。その瞬間――周囲を、温かい光が包む。
その光はフレディやセイディだけではなく、アーネストやジョシュアのことも包み込んでいたようだった。
(これで、成功してっ!)
そんな祈りが、届いたのか、はたまた別の要因だったのか。次にセイディが目を開けば……フレディの傷は、きれいさっぱり消えていた。
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