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「……セイディ?」
フレディが、セイディの名前を戸惑ったように呼ぶ。
それを聞いて、セイディは「……よかった」と言って身体から力を抜いた。へたり込んでしまいそうになるが、そこはぐっとこらえる。その後、ゆっくりと息を吐いた。
視線だけで周囲を見渡せば、誰もが驚いたようにセイディのことを凝視している。いつの間に目を覚ましたのか、神官長までもがセイディのことを見ていた。……どうやら、先ほどの光で目を覚ましたらしい。
「……はは、はははっ!」
それからしばらくして聞こえてきたのは、誰かのそんな笑い声だった。その声の方向を視線で追えば、そこにいたのは――ジョシュアで。
彼はその銀色の髪をかき上げながら、面白そうに笑う。
そして、彼の視線はアーネストに注がれていた。
「全部、ぜーんぶめちゃくちゃだな。……アーネストよぉ」
「……貴方、どっちの味方ですか」
けらけらと面白そうに声をかけながら、ジョシュアは剣をしまい込むとアーネストの方に近づいていく。
そのままアーネストに、何かを囁いていた。
その言葉を聞いたためだろうか。アーネストは「クソッ」と声を上げた後、自らの手に持っていた剣をしまい込む。
アーネストの行動にセイディが驚いていれば、ジョシュアは今度はセイディの方に近づいてくる。思わず身構えたものの、彼のその視線には敵意がこもっていない。ただ、慈愛のような、まるでいつくしむような感情が込められていた。……意味が、分からない。そう、セイディは思う。
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