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「……さっきの光、なんだったんだ」
アシェルが、直球に問いかけてくる。そのため、セイディは「……話せば、長くなるのですが」といったん前置きをする。実際、話すとかなり長い内容となってしまう。簡潔にまとめれば、光の魔力を使った。それだけで済むのだが、それで納得してくれるとは思えない。
「それじゃあ、いいわ。とりあえず、戻ってから詳しい話は聞きましょう」
「……はい」
「あと、宮廷魔法使いのフレディ様? いつまでそこにいらっしゃるのかしら?」
リオの視線が、セイディからすぐそばにいるフレディに移動する。彼はセイディの膝の上に頭を預けており、優雅にくつろいでいた。……先ほど死にかけた人間の行動とは、到底思えない。
「……いいじゃない。今くらいは」
「……お前、帝国の刺客だっただろ」
アシェルの刺々しい言葉に、フレディは「そうだね」と言ってにっこりと笑っていた。
「でも、僕は皇帝陛下に逆らうよ。……そうじゃないと、セイディのことを庇わない」
「何があったのかは、あとで詳しく話してもらう。……たださ、セイディの気持ちくらい、汲み取ってやれ」
……しかし、アシェルの言葉は本当に余計だな。
内心でそう思いながら、セイディはそっと視線を逸らした。
フレディのことを信じたい。そう思う気持ちは確かに真実だったし、庇ってくれた時は自分の考えが間違いではなかったと思った。でも、その気持ちを真正面から言わないでほしい。……何処となく、照れくさいじゃないか。
「……セイディ?」
ゆっくりと、フレディがセイディの名前を呼ぶ。そのため、セイディは「……何でもないですよ」と言って目を瞑る。
「フレディ様のこと、信じていただけです。……ただ、一つだけ言わせていただいても、よろしいでしょうか?」
「いいよ、何でも言って」
「――そこから、どいていただけませんか?」
きっと、セイディのこの言葉は、場違い感が半端ない言葉だったのだろう。
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