手伝え

4/4

710人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
 自分がジャックの役に立てるかどうかは、分からない。それでも、少しでも役に立ちたいのだ。ジャックが悪い人ではないのは、分かっている。そんな彼に、幸せになってほしいと思うのは当然なのだ。……上から目線だと言われるかもしれないが。 「……そうか。それは、その、助かる」  セイディの目を見て、ジャックはそう言ってくれた。その表情が何処となく可愛らしく、そして面白くも見えてしまうのは、セイディがジャックのことをそこまで嫌悪していないからだろうか。多分だが、アシェルにこのことを伝えれば「大物」と言われるだろう。 「さて、話は変わるが相変わらず殿下は行方不明中だ」 「……ちょっと待ってください。それ、重要案件ですよね?」 「まぁな。まぁ、今日は俺が護衛だから良いだろう。放っておくぞ。……ほら、行くぞ、セイディ」  あ、今、名前で呼んでくれた。心の中でそう思うものの、セイディは指摘しない。ここで指摘をすると、彼の性格上絶対に慌てふためく。ついでに言えば、面倒なことになる。それが分かっていたので、セイディは気が付いていないフリをした。もちろん、心の中では「言った方が面白いだろうなぁ」とは、思っているが。言わないが。絶対に、言わないが。  そして、セイディはゆっくりと王宮の入り口に立つ。ここを出れば、自分は今からこの『光の収穫祭』の主役と言っても過言ではない存在になる。……アーネストのことを考えると、自分は堂々とするべきだ。そう思いながら、セイディはゆっくりと深呼吸をした。 「……行きます」  その後、そう呟いて一旦目を瞑る。今まで、いろいろなことがあった。それでも、もう自分は――怯まない。そう心に誓って、目を開いた。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

710人が本棚に入れています
本棚に追加