『光の収穫祭』を明日に控えて

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「そういえば、どうしてアーネスト様は私の顔を見て驚かれたのかしら?」  そんなことを思い出し、セイディはそう呟く。アーネストは、セイディの顔を見て「敵に回すことは得策ではない」的なことを言っていた。それはつまり……セイディの顔に、見覚えがあったのかもしれない。セイディ自身は、アーネストのことを全く知らなかったが。 「……もしかして、お母様の、こと?」  オフラハティ子爵家の使用人たちは、セイディのことを見て「貴女様は、お母様にそっくりなのですよ」とよく言ってくれていた。セイディ自身に実母の記憶はないが、それでも使用人たちが声をそろえてそう言っていたということは、実際にそっくりなのだろう。執事も、実母の専属だった侍女も。よく、そう言っていた。 「明日からは、お守りとしてこれを持っていこうかな」  それから、そう呟いてセイディは引き出しの中から実母のものだった指輪を取り出す。これは、ミリウスを助けた際にも使用したものだ。シンプルだが、気品の伝わってくる綺麗なデザイン。それだけではなく、聖女の力を高めるという機能性にも優れたものだ。……これから何かがあっても、きっと実母が守ってくれる。今は、そう信じることしか出来ない。 「お母様。私のこと、見守っていてね」  天井を見上げながら、セイディはそう零す。父や継母、レイラには期待していない。それでも、使用人たちから慕われていたという実母ならば。きっと、セイディのことを見守ってくれるはずだ。実母は、セイディの幸せを狙ってくれているはずだから。  そんなことを考えていれば、不意に部屋の扉が三回ノックされた。時計を見れば、時間はもうすでに九時を回っている。……一体、誰だろうか? もしかしたら、急用なのかもしれない。そう考え、セイディは慌てて「はーい」と返事をし、扉の方に近づいていく。
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