それが私の仕事ですから(1)

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 それからしばらくの『光の収穫祭』は、特に問題も起きずに滞りなく進んだ。もちろん、セイディの体調があまり優れないという要素はあったのだが。それでも、セイディは笑みを張り付け民たちに愛想を振りまく。あの短い期間で身に着けた気品も、かなり役に立っていた。 (なんとなく体調は悪いけれど、今日は大丈夫そうね)  笑顔を振りまきながら、セイディはそんなことを思う。側で控えているジャックが何処となく微妙そうな表情を浮かべているのは、間違いない。大方、セイディが無茶をしないかどうかを見張っているということも、あるのだろう。  ……やはり、真面目な性格だ。もう少し、ミリウスもジャックを見習ってくれたらいいのに。そう思う気持ちは、少なからずあって。 (……アーネスト様がどういう風に仕掛けてくるかが分からない以上、私は気を引き締めなくちゃ)  そう考え、セイディは光の魔力を披露していく。その魔力は大きなものではない。ただし、高度な調整が必要な難しいものを選んでいる。理由など簡単だ。帝国に、セイディの力を示すため。神官長と相談を重ね、こういう形になったというのもある。 「なんていうか、今年の聖女様って……」 「あぁ、いつもとはオーラが違うような気がするよな……」  セイディが光の魔力を披露していれば、何処からかそんな声が聞こえてきた。……それでも、それ以上何かを指摘されたり言われることはない。それにホッと一安心する。今はまだ、帝国の脅威に付いて悟られるわけにはいかない。王家の考えが、ミリウスの考えがそうである以上、セイディはそれに従うまでである。  そして、ある程度光の魔力を披露した後。ジャックに時間だと耳打ちされ、セイディは次の神殿に向かう準備をすることにした。……一応、民たちはセイディの正体を特に勘繰ってはいないらしい。もしかしたら、聖女たちは何か気が付いているかもしれないが。  それから、最後にセイディが「失礼します」と声を上げようとした時だった。
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