それが私の仕事ですから(1)

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「聖女様が、痛いのを取ってあげるからね」  その後、女の子にそう声をかけて――セイディは、女の子の擦り傷の部分に光の魔力を注いでいく。そうすれば、あっという間に女の子の膝の擦り傷は消えていき。その光景に、周囲の民たちはざわめいていた。……この治癒のスピードは、かなりのものだと分かったからだろう。 「あ、あの……」 「……今度は、転ばないようにしっかりと見ていてあげてくださいね」  女性がセイディに何か声をかけようとするので、セイディはそれを遮って端的にそう告げた。それから、「ありがとう、聖女様!」とお礼を告げてくる女の子に手を振って、用意されていた馬車に乗り込む。ジャックは、ただ黙ってセイディについて来てくれていた。 (あまりこういう風に力を使うのは褒められたことではないかもだけれど……。それでも、これも聖女の仕事の一環だし)  聖女とは民たちを癒すのも仕事である。そのため、今行ったことは間違いではない。  心の中でそう思い、セイディは馬車の窓から民たちに手を振る。もちろん、笑顔で。そんな中、ジャックは仏頂面でセイディのことを見つめていた。彼は、怒ってはいない。ただ、呆れているのだろう。少なくとも、何らかの感情をセイディに抱いているはずだ。それだけは、セイディにも分かった。
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