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「ただ、恩返しをしているだけです。……騎士団の方々、魔法騎士団の方々、皆様のお役に立つために、働いているだけです」
「そうは、見えないがな」
「……そうですか。まぁ、そうかもしれませんね」
ジャックのその言葉に、セイディはただ静かに言葉を返して目を開く。
「だって、これが私の仕事ですから。……私は、与えられた仕事を全うするだけですから」
役割があることは幸せなことだ。居場所があることも、幸せなことだ。だから、セイディは行動するだけなのだ。仕事がある以上、期待以上の結果を残す。居場所を失わないように努力をする。もちろん、不可抗力で失敗をすることも、失うこともあるのだろうが。
「……そうか」
どうやら、ジャックはこの言葉で納得してくれたらしい。そういうこともあり、セイディはただ頷いた。が、それからすぐ後のことだった。
「――っつ!」
頭を、鈍器で殴られたような酷い痛みが、セイディのことを襲った。その頭痛は到底耐えられるようなものではなく、倒れてしまいそうになる。
「おい!」
それに気が付いたからだろう。ジャックが、慌ててセイディの身体を支えてくれた。ジャックはゆっくりとセイディに声をかけてくれるが、その声さえ遠のいていく。
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