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そして、ゆっくりと扉を開けた。すると、そこには――何故か、ミリウスがいて。彼はセイディの顔を見ると「ちょっと、話がある」と言って身を翻す。どうやら、廊下で話すらしい。確かに、ミリウスがセイディの部屋に入ることはあまり好ましいことではない。特に、二人きりともなれば。
「どうか、なさいましたか?」
ミリウスの後を追い、廊下に出たセイディがそう問いかければ、ミリウスは「……ちょっと、面倒な情報が耳に入ってな」と言って、セイディの目をまっすぐに見つめてきた。……なんだろうか、嫌な予感がする。そう思い、セイディが静かに息を呑めばミリウスはその目を細めながら、「……多分だが、お前の両親はろくなことをしていないぞ」と告げてきた。
「……どういう意味、ですか?」
「実は、いろいろと調べていたんだが……帝国の内通者が、この国にいることが分かった。……それでだな、その内通者というのが――」
――多分、オフラハティ子爵夫妻だ。
ミリウスは、そう言ってセイディのことをただ見つめてくる。その言葉の意味をセイディが理解したのは、それから数秒後のことだった。
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