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「なんだ、文句でもあるのか?」
セイディの態度を見たからか、ジャックは怪訝そうにそう声をかけてくる。そのため、セイディは「……いえ、なんていうか……悪女みたいな?」なんて言葉を返した。
「悪女?」
「ほら、見た目麗しい男性を侍らせる、悪女みたいな感じになりませんかね?」
ジャックの復唱に、セイディはそう返す。そうすれば、ジャックは「……俺たちは、そんな簡単な奴じゃない」と言ってくる。まぁ、それは知っている。ジャックもミリウスも、そんな簡単な人間じゃない。分かっている。ただの、例え話だ。
「それに、殿下を侍らせられると思うなよ。振り回されるのがオチだ」
「……ですよね」
「あと、俺は利用されるのが大層嫌いだ」
「そうですよね」
ジャックは公爵家の令息だ。それはつまり、それだけプライドが高いということ。ジャックはそこまでプライドが高そうには見えないが、それでも彼には彼なりのプライドがあるはず。それは、セイディだって知っている。
「まぁ、お前だったら、まだ……その」
「はい?」
「いや、お前ならばまだ、振り回されるのも……と思っただけだ」
いや、一体どうしてそうなる。そんなことをセイディが考えていれば、ジャックは「忘れろ」とだけ低い声で言ってきた。
(多分、ジャック様はほかの女性に振り回されるくらいならば、私に振り回された方がマシだと思われているのよね)
多分、そういうことだろう。セイディは一人自己完結しながら、ジャックの言葉に笑ってしまった。
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