第一の襲撃(1)

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「こういう時に殿下がいれば、もう少し楽なんだがな」  馬車に乗り込めば、ジャックはボソッとそんな言葉を零す。それにセイディは軽く同意をしながら、ただ馬車の窓から外の景色をちらっと見つめた。アーネストは、いない。それでも、多分彼は無駄な血を流すことは好まないタイプだろう。それは、決して慈悲深いからなどではない。ただ、自分にメリットがないから。そして、自分の手間が増えてしまうから。彼は何処まで行っても、メリットデメリットで判断するのだろう。そんな気が、した。 「……なぁ」  じっと窓の外をセイディが見つめていれば、ふとジャックが声をかけてくる。その声音はとても真剣なものであり、セイディはまっすぐに彼のことを見据えた。そうすれば、彼は「……多分だが、あの男だけじゃないぞ」とボソッと言葉を告げる。 「確かに、主犯格はあの男――アーネストの奴かもしれない。が、多分ほかにも帝国の人間がいる。それも、皇帝陛下のお気に入りが」  ジャックの言葉に、セイディは目を瞬かせた。その可能性は、少しだけ思い浮かんでいた。アーネストはセイディの力を見た時、敵に回すのは得策じゃないと言っていたのだ。それでも、彼らがリア王国への侵略を諦めた気配はない。ならば、することはたった一つだろう。援軍を、呼ぶ。それも、とんでもない実力者を。 「それに、あの宮廷魔法使いが帝国を裏切ったと断定することは出来ない。だからな、あの宮廷魔法使いのことも警戒しなくちゃいけない」 「……分かって、います」 「随分と、物分かりがいいな」
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