第一の襲撃(1)

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 確かに、今までのセイディならばこの言葉に少しのためらいを見せただろう。それでも、今は自分の考えだけで突っ走っていい時ではないのだ。今するべきは協力であり、王国を守ること。 「……とはいっても、相手がどう仕掛けてくるかだな」  どう仕掛けてくるかが、分かればいいのに。心の中でそう思いながら、セイディがもう一度窓の外に視線を向けようとした時だった。 「っつ!」  馬車が、大きく揺れた。これは、石に躓いたとかそう言うレベルではない。そう考え、セイディは視線だけで素早く周囲を観察する。しかし、異変などはない。ならば――。 「ジャック様、上です!」  前、右、後ろ、左。ここに異変がないのならば、一番考えられる可能性は――上。そう考えセイディが声をかければ、ジャックは魔法で馬車の屋根を突き破る。途中、こっそりと「……備品を壊したから、弁償だな」なんて呟きも、セイディの耳に入った。……この際、貯金がある程度消えても仕方がない。王国を守らない限り、貯金など無意味なのだ。 「よっと。この間ぶりですね、聖女様」  馬車の屋根が壊れた後、上から一人の青年が下りてくる。その青年はさらりとした髪を揺らしながら、セイディのことを見つめてにっこりと笑う。その目は細められているが、相変わらず狂気を纏ったような。 「……アーネスト様」 「はい、アーネストです」  セイディの言葉に、アーネストは抑揚のない声で返事をくれた。その後、彼は人差し指を自身の唇に押し当て――「襲撃、してみました」なんてお茶目な雰囲気で、言っていた。
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