第一の襲撃(3)

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 その通信機を手にして、セイディはアシェルに連絡を取ろうとする。幸いにも通信相手の番号は名前と共に側にある付箋にメモされていた。それを見て、心の中で几帳面なジャックらしいと一瞬だけ思ってしまった。しかし、今はそれどころではないと思い直し、その中のアシェルの番号を押していく。そういえば、ミリウスは通信機をよく無くすと言っていたような気がした。  数回のコールの後、アシェルの「……どうしましたか?」という怪訝そうな声が通信機越しに聞こえてきた。口調が丁寧なのは、相手がジャックだと思っているからだろう。そんなことを思いながら、セイディは通信機に向かって「アシェル様!」と叫ぶ。その声を聞いて、アシェルは「セイディか?」と問いかけてきた。 「一体、どうした。どうにも焦っているようだが……」 「えぇっと、まぁ、簡単に言えばアーネスト様に襲撃されまして……」  それは、簡潔に言い過ぎだろう。セイディ自身もそう思いながら淡々とことを端折って説明する。その説明で伝わったかどうかは、よく分からない。それでも、通信機越しの「分かった」というアシェルの言葉を信じることしか出来ない。 「とにかく、誰かを向かわせる。……それまで、凌いでおいてくれ」 「は、はい!」  少なくとも、凌ぐのはセイディではなくジャックだ。そう思うが、今のジャックに返答を求めるなんて無理だろう。それが分かっていたからこそ、セイディは返事をして通話を切った。その後顔を上げれば、アーネストと視線がばっちりと合ってしまう。彼は少しだけ口元を緩めながらも、攻撃の手は緩めない。 「……ジャック様、アシェル様に繋がりました……!」 「分かった。アシェルならば、まだまともに頼れる」
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