第一の襲撃(3)

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 ジャックのその声音は、何処となく焦っているようにも聞こえる。そして、その言葉は裏を返せばミリウスは頼れないということなのだろうな。心の中でそう思いながら、セイディは脳内を必死に落ち着け、冷静に周囲を分析した。どちらかと言えば、この状況で押しているのはアーネストだろう。それは、当然だ。ジャックはセイディのことを庇いながら戦っている。それだけでも分が悪いのに、アーネストは遠慮をする素振りもない。元々彼が遠慮をするような人種ではないことも、分かっている。 (とりあえず、私は私に出来ることを……!)  そう思うが、出来ることなど一つもなさそうだ。扉側にはアーネストがおり、逃げるに逃げられない。窓から飛び降りてもいいが、それはそれでいろいろと後から面倒なことになりそうだ。今は、この場を凌ぐことしか出来ないだろう。……平穏に解決するのは、無理だろうが。 (アシェル様が到着するまで、一体どれだけの時間がかかるかは分からないわ。……だったら、私に出来ることは――)  ジャックの、援護が出来たならば。一瞬だけそんなことを思い、セイディは援護の方法を考える。しかし、ジャックはセイディに大人しくしていろと言っていた。ならば、変に手を出すことは得策ではない。アーネストの気を逸らすために話しかけてもいいが、アーネストが易々とそんな罠にかかるとは思えない。  そう思い、セイディは指輪をぎゅっと握った。こんな時、自分にできることは祈ることだけだろう。神頼みなんてやっても意味があるのかどうかは、分からない。それでも、ないよりはマシ。短時間でそう判断し、セイディはじっと目を瞑って意識を集中させる。
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