第一の襲撃(4)

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 自身の衣服を正しながら、ジャックはボソッとそんな言葉を零す。だからこそ、セイディは「……そう、ですね」と言って目を伏せる。アーネストは、かなりの実力者だった。それは、側で見ていただけのセイディにも分かること。ジャックほどの実力者を押していたのだ。それだけ彼、アーネストには実力があるということ。 「さて、神殿巡りの続きに行くぞ」 「……はい」 「そんな暗い顔をするな。……別に、命に別条があるわけじゃない」  セイディの不安を感じ取ってか、ジャックはそう言ってくれた。どうやら、彼にも少しずつだが女性を気遣う気持ちが芽生えてきたらしい。……まぁ、きっとそれはセイディに対してだけなのだろうが。というか、セイディが女性として見られていないという方が正しいのか。 「アシェルの奴と合流して、いろいろと話すぞ。……今日は無事終わるかもしれないが、明日からが心配だ」 「……そう、ですね」 「ったく、殿下にはきっちりとくぎを刺しておかなくちゃな」  ジャックの言うくぎとは大方勝手に行動をしないようにしろということなのだろう。それだけは容易に想像が出来たので、セイディは特に突っ込むこともなく。ただ、荒らされた馬車に揺られていた。 (……あぁ、さようなら、私の貯金……!)  いくらこの聖女業も仕事とはいえ、馬車の修理費が恐ろしい。そう思いながら、セイディは内心でため息をついていた。ジャックには、バレないようにこっそりと。
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