一日目の終わり(1)

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 それから神殿を回り終え、セイディは遅い時間に王宮に戻ってきていた。予想通りと言っていいのか、馬車の天井に穴をあけたことは咎められた。が、幸運にも理由が理由だったため、セイディやジャックに弁償しろと言われることはなく。セイディは厳重注意で済んだのだ。 「……はぁ」  その日の夜、王宮で間借りしている部屋のバルコニーからセイディは空を見上げていた。。王宮の部屋は、自身の部屋の数倍豪華であり、何処となく落ち着かない。それに合わせ、リリスがいないというのも関係しているはずだ。いつもならば、リリスが自分を支えてくれていた。なのに、彼女はもう――ここには、戻ってこれない。 「貯金は無事だったけれど、何だかなぁ……」  そうぼやきながら、バルコニーから街を見下ろす。この時期に限って、王国は夜もにぎやかだ。そこら中で明かりがつき、民たちが移動している。聖女の巡礼は昼間のみとはいえ、やはり民たちからすればこのお祭りは特別なのだろう。それを、実感する。  そんなことを思いながら、セイディは肌寒くなった空気に身震いをした。もうすぐ冬ということもあり、この時間は寒くなってくる。さて、そろそろ部屋の中に戻るか。そう思い、セイディはバルコニーから部屋の中に戻った。部屋の中は適温に保たれており、寒くはない。……寒いのは、常に懐である。 「明日も早いし、もうそろそろ寝ようかな……」  我ながら考え方が貧乏人臭いな。心の中でそう零しながら、セイディは寝台の方に移動する。王宮の客間ということもあり煌びやかで巨大な寝台は、とても寝心地がよく。快適だった。
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