一日目の終わり(3)

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「……そういう、わけでは」  何も言えなかった。その所為で視線を下に向けてそう答えれば、ミリウスは「そっか」とだけ言葉を返してきた。その後、「まぁ、俺はセイディの恋愛事情に口を出す権利があるわけじゃないしな」と告げてくる。 「俺はあと二年で騎士団辞めるし、その後のことを考えると面倒だなぁって思うな」 「そう、ですか」  確かに騎士は二十五歳前後で辞めることの多い職種だ。婚姻すれば、大体の騎士は仕事を辞める。もしくは、私立の騎士団に移籍する。理由など簡単だ。王立の騎士団では、時間が縛られすぎるから。家庭を持つことがそのままでは難しいから。 「だから、セイディの今後のことを考えるといろいろと思う気持ちは、分かる。お前も、そうだろ?」 「……まぁ、そう、だと思います」  実家のことを知って以来、その気持ちは強くなった。実家がマギニス帝国と癒着しているのならば、自分がここにいる権利はない。たとえ勘当されていたとしても、それをよく思わない人間は多いだろうから。 「ただ、一つだけ言えることがあるんだ」 「……何、でしょうか?」 「セイディはセイディだ。……実家の奴らに振り回されるような女じゃないだろ?」  頬杖をつきながら、ミリウスはそう言う。その言葉は、本気でそう思っているようであり、セイディのことを買ってくれているのはよくわかる。だからだろうか、セイディは「はい」と返事をすることが出来た。 (そもそも、実家が不正を暴かれて没落しようが、私の知ったことじゃないのよ。……使用人たちは、心配だけれど)  目を瞑って、そう思う。使用人たちが路頭に迷うのは避けたい。セイディが心配するのはそれだけだ。実父や継母、レイラのことは基本的にはどうでもいいのだ。
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