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「あ、あのっ!」
ミリウスの背中に声をかければ、彼はゆっくりと振り向いた。その際に、一つに束ねられた長い金色の髪が揺れる。……とても、綺麗だった。
「でしたら、どうしてそのことを私に教えてくださったのですか? 黙っていた方が……その、いろいろと都合がいいかと、思いまして」
ゆっくりとそんな言葉を紡げっば、ミリウスは「あ~」と言いながら天井を見上げた。……まさかではあるが、何も考えていなかったのではないだろうか? そんなことをセイディが思っていれば、ミリウスは「……直感?」なんてことを告げてくる。
「このことを、セイディには伝えておいた方が良い。そんなことを、突然思い立ってな」
「……それって、理由になっていますか?」
「なっていないな。……まぁ、俺はお前があの夫妻に協力しているとは考えていないわけだしな」
にやりと口元を上げ、ミリウスはそう言う。その後、彼は「じゃあ、また明日な」と言って手をひらひらと振って歩いていく。……大方、自室に戻るのだろう。
「……というか、いきなりあんなことを言われても」
父のことも、継母のことも、レイラのことも、信じてなどいない。好いてもいない。だから、彼らがどうなろうが関係ないし、興味もない……と言えば、薄情だと言われるかもしれない。それでも、自分を虐げてきた人たちを心配しろ、愛せと言う方が酷だ。そう、セイディは思っていた。
「……はぁ、なんていうかなぁ」
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