一日目の終わり(4)

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「あー、そう身構えるなって。俺、お前に手出しするつもりこれっぽっちもねぇし。……多分」  身構えるセイディを見つめ、ジョシュアは大きなあくびをした後そう言葉を発した。それから、彼はゆっくりとセイディに近づいてくる。その禍々しい赤色の目は、セイディ一人だけを射貫いている。その狂気に満ちた視線は、見るものを委縮させる効果でもあるかのような。そんな雰囲気だった。 「……そのお言葉、信じられません」 「そうかよ、まぁ、それならばいいけど」  ジョシュアはそれだけの言葉を残し、セイディのすぐ真正面に立ち、セイディの顔と自身の顔をぐっと近づけてくる。ジョシュアの顔立ちは、とても整っていた。ただし、今はそれどころではない。ジョシュアは、帝国の人間なのだから。 「俺はな、アーネストの奴に呼ばれてきただけだ。……けどさ正直、俺にとっちゃあ帝国の目的とか、関係ねぇんだよ」  けらけらと笑いながら、ジョシュアはそう言う。セイディがゆっくりと後ずされば、後ろは壁だった。どうやら、後ずさりも限界が来ているらしい。倒れた騎士たちが起き上る気配はない。頼りになるのは、自分だけ。そう自分に言い聞かせ、セイディはジョシュアの目を見つめる。セイディの真っ赤な目と、ジョシュアの禍々しい赤い目が醸し出す視線が交錯する。 「……では、どうして帝国に、皇帝陛下に協力するのですか」 「そうだなぁ……。俺にはさ、守りたいものがあるんだわ」  また一歩セイディに近づきながら、ジョシュアはそういう。その後、セイディの顔の丁度横にある壁を、どんと大きな音を立てて叩いた。これは、世にいう壁ドンだろうか。が、そんなもの胸キュンしている場合ではない。少なくとも、壁にひびが入っているのだから。……ジョシュアの力は、相当強いらしい。
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