一日目の終わり(4)

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「恩人にな、守ってほしいって言われた。だから、俺はそいつを守るためだけに生きている」 「……それ、は」 「大体さぁ、俺らって大体みーんな同じ目的なわけ。……守りたい。だから、自分の正義を貫く。どれだけの犠牲の上に成り立ったとしても、構わない」  きっと、彼らは究極の自己中心的な考えの持ち主なのだろう。人の幸せを踏みつぶしてでも、自分の幸せを手に入れようとしている。自分が大切にしている存在を守ろうとしている。それは考えようによっては美徳となるのかもしれない。でも、そのために他者を犠牲にするのはいただけない。少なくとも、セイディはそう思っている。 「間違っていると、思わないのですか?」  真剣な声音でジョシュアにそう問いかければ、彼は「思わないねぇ」なんて言葉を返してきた。その声は、挑発的であり、何処となく人を不快にするような声音。 「そもそも、この世界に何がある。生き物っつーのはな、狩るか狩られるかの二択だ。綺麗ごとなんて必要ない。俺たちは狩られる側に回りたくない。そうなれば、必然的に狩る側だ」 「……」 「……そもそもな、今まで散々人を苦しめておいて、のうのうと生きている人間が許せねぇんだわ。……だから、俺は、俺たちは」  ――どれだけの犠牲を生み出そうとも、自分の正義を貫く。  ジョシュアのその言葉に、セイディはゆっくりと目を瞑った。もう、無理だろう。彼らとは会話をしても何処までも平行線だ。彼らは自分の正義を変えない。そして、セイディも自らの考えを変えるつもりはない。そうなれば、考えは何処まで行っても交わらない。ただ、どちらかが狩られるまで。この話は、永遠に続く。
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