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ジョシュアのその銀色の髪が、月の光に照らされて美しく輝く。その髪にちらりと視線を向け、セイディはただ必死に思考回路を張り巡らせた。……ここで、変に刺激をすることは得策ではない。かといって、逃げ出せるわけがない。
(どうする? どうする? 説得は……無理よね)
ジョシュアもアーネストと同類だ。自らの正義以外を、悪だと決めつけている。それが分かるからこそ、セイディはじっとジョシュアの目を見つめた。その禍々しい目は、見方によってはとても綺麗に見える。……魅了、されてしまいそうだった。
「……では、一つだけお教えいただけますか?」
「は?」
「殺される前に、一つだけ訊きたいことがあるのです」
何の声音も宿さない目で、セイディはジョシュアのことを見つめそう口を開いた。そうすれば、ジョシュアは怪訝そうな声を上げる。それを無視して、セイディは「貴方は、アーネスト様は、そこまでして何を守りたいのですか?」と問いかけた。
セイディは決してここで易々と殺されるつもりはない。ただ、時間を稼ぐことにしただけだ。ジョシュアがその作戦に乗ってくれるかは、分からない。でも、懸けてみよう。そう、思ったのだ。
「……お前に教えて、何になる」
「何にもなりません。ただの、世間話ですよ」
「殺されるっつーのに、のんきだな」
「まぁ、私って図々しくて図太いですから」
淡々とジョシュアの言葉に返答していれば、彼は面白そうに唇を歪めた。その後、「……俺にはな、妹がいる」とゆっくりと話し始めた。
「……妹、ですか?」
「あぁ、血のつながりはない。吸血鬼と人間のハーフである俺に対して、妹は生粋の人間だ」
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