救世主(1)

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 そこまで言って、ジョシュアは一旦言葉を切った。が、すぐに「俺の守りたいものは、その妹だ」と教えてくれた。……その「妹」という単語には、何処となく嫌悪感を覚えてしまう。それは、セイディにとって妹とはレイラを言い表す単語だからだろうか。 「つーか、恩人の娘って言った方が、正しいのかな。……義妹っていう言葉が、一番似合うか」  けらけらと笑いながら、ジョシュアはそう言う。その声音は何の感情も宿していない。それでも、セイディには分かった。……「妹」のことを語るジョシュアは、何処となく嬉しそうだと。本当に、愛おしいのだと。それだけは、分かったのだ。 「俺はアイツを守りたい。何が何でも、傷つけさせない。……アーネストも、同じような感じだ」 「……そうなの、ですか」 「あぁ、まぁアイツの場合は婚約者だけれどな、妹じゃなくて」  その後、ジョシュアは「長話、しちまったか」と言いながら眉間にしわを寄せていた。 (……違う。ジョシュア様は、私の作戦を知っていて乗ってこられた)  今のジョシュアの言葉は、単純に聞けばセイディの作戦など知らないようだった。でも、セイディには分かった。……ジョシュアは、セイディの作戦を分かったうえで乗ってきたのだ。時間稼ぎに、付き合ってくれたのだ。 「……あのな、お前、妹と似ているんだわ。だから尚更――殺しにくい」  ゆっくりと目を瞑って、ジョシュアはそう話しかけてくる。だが、セイディはジョシュアの妹ではない。だから、彼は自分を始末しようとする。それは、分かった。 「妹さん、きっとジョシュア様のこと、好きです」 「……はぁ?」 「だって、こんなにも自分のことを守ってくれようとするお兄さん、好きにならないわけがないじゃないですか」
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