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その言葉は、セイディの口から自然と出た言葉だった。何の作戦でもない。ただ、伝えたかったから伝えただけ。それに、思うのだ。ジョシュアが妹のことをこんなにも思っているのだから、妹もジョシュアのことを慕っているのだろうと。
「……分かったようなこと、言うんじゃねぇ」
「……そうですね、申し訳ございません」
それだけを言って、今度はセイディは目を閉じる。ジョシュアは、きっと妹のことに触れられることを嫌うのだろう。いや、違う。誰かに妹のことを分かった風に言われるのが、嫌なのだ。
(独占欲の塊ってか)
心の中でそうぼやき、セイディはまたゆっくりと目を開ける。ジョシュアの目は、露骨に揺れていた。それは、どうして? 自分がその妹に似ているから? それとも――分かったような口を、聞くから?
(まぁ、どっちでもいいわ。だって)
もうすぐ――。
そう思い、セイディは視線を斜め上に向ける。すると、そこには――綺麗な金色が見えて。
「っていうか、セイディ、殺されかけるなよ」
「……好きで、殺されかけているわけではありません」
「そっかそっか。……まぁ、もう大丈夫だな」
セイディの身体をジョシュアの下から引きずりながら、ミリウスは楽しそうに笑う。……本当に、彼は空気が読めないのか。内心でそう思いながら、セイディはミリウスに引きずられていた。……少し、身体が痛い。
「……っていうかさ、お前、誰?」
「……名乗るの面倒だな。ジョシュア。それだけ言っておく」
そう言って、ジョシュアは笑う。それに対して――ミリウスも、怯むことなく笑っていた。
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