救世主(2)

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「……ジョシュア、ねぇ」  ミリウスはそれだけを呟くと、まっすぐにジョシュアの目を見つめる。それからしばらくして、「……人外、か」と零していた。 「人外っつーのはちょっと気に食わねぇ言い方だな。俺は吸血鬼。世にいう半吸血鬼っつー奴だ」  ミリウスの言葉に反論するように、ジョシュアはそう告げてきた。それを聞いて、ミリウスは「お前、帝国の奴だろ?」と直球に問いかける。その問いかけは、問いかけではない。確信をもって言う、いわば尋問に近いようなもの。ミリウスの鋭い緑色の目が、ジョシュアを射貫いていた。 「まぁ、そうだな。俺、帝国の出身」  それに対し、けらけらと笑いながらジョシュアはそう答えた。それを聞いたからなのか、どうなのか。それは分からないが、ミリウスは「セイディ、下がれ」と言って自身が前に出る。  正直に言えば、下がりたくはなかった。が、それ以上に余計なことをしてミリウスの邪魔になることは避けたい。昼間と一緒だ。ジャックやミリウスのような実力者の邪魔にならないのが、自分にできること。 「アーネストの奴がさぁ、自分じゃ騎士団長には敵わないからって、俺呼び寄せたわけ」 「そっか」 「ま、俺この世で一番強いし? お前に負ける未来とか想像出来ないわけだ」  その言葉を聞いたからか、ミリウスが自身の大剣に手をかけた。そうすれば、ジョシュアは「そう怒るなってば」と言いながら手をひらひらとさせる。 「こうなった以上、俺が不利なのはバカでも分かるわ。だから、一旦引いてやる」 「……逃がすと、思うのか?」 「逃がすとかそーいう問題じゃないんだわ。……ほら、俺って天才だし?」  ジョシュアはそんな言葉を笑いながら告げると、何やら呪文を唱える。すると、彼の姿が消えていく。……アーネストと同じ転移魔法だろうか。何処となく雰囲気が違うのは、術者の魔力の属性が違うからかもしれない。
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