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「今日のところは引いてやる。……ま、明日も同じとは限らねぇけれど」
「……出来れば、このままこっちには顔を出さないでほしいな」
「それは無理な相談だ。俺はブラッドリーの奴には逆らえねぇから」
その言葉を最後に、ジョシュアの姿が完全に消えた。それに一安心したためか、セイディはホッと一息をついて――その場に、崩れ落ちてしまった。さすがに、気を張りすぎていたらしい。ジョシュアの爪の感覚は、未だに鮮明に残っている。……彼は、本気でセイディのことを始末する気だった。
「……立てるか?」
セイディの様子を見かねてか、ミリウスがそう問いかけてくる。だからこそ、セイディは静かに頷いた。……だが、それよりも。倒れた護衛の騎士たちの方が気がかりだ。そう思い、セイディが彼らに視線を向ければ、ミリウスは「……アイツらは、俺が回収しておく」と言う。
「大丈夫、でしょうか?」
「あー、ジョシュアの奴の魔力にやられただけだろ。気絶しているだけだろうし、無事だ」
「でしたら、よかったです」
きっと、他者から見れば人の心配をしている場合ではないと言われるのだろう。だが、セイディからすれば騎士たちは同じ場所で生活をする存在。いわば同僚や先輩なのだ。無事かどうかは大切な問題。それに……自分の所為で命を落としたとなれば、それこそ夜も眠れなくなる。
「そんじゃ、寝ろ」
「……この騒動の後に、いきなり眠れるわけがないですよ。もうしばらく、起きています」
「そりゃそうか。……何だったら、一緒にいてやろうか?」
「遠慮します」
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